哲学ナックルダスター

主に東洋古典を自分の言葉で噛み砕いてくブログ。たまに俳句を詠んだり、他の記事も書きます

粗悪な孫子ビジネス本にツッコミを入れる

前回に続き

kamata-ei.hatenablog.com

引用されてる孫子の文章とビジネスの成功例。それに対するツッコミ。

将の能にして君の御せざる者は勝つ(謀攻篇5章)

営業で2つのグループが有って、片方は切れ者で「俺の言う通りにしていけば間違いない」と部下を率先していった。片方はおっとり型で一見頼りなく、部下の話を聞きながらのんびりと進めて行った。

結果はおっとり型の方が売り上げが勝った。切れ者グループはリーダーが優秀で自分のやり方で指導していった。だからリーダー以上の能力を持った部下が生まれなかった。

おっとり型は一人一人が独自の仕事ができたので成果を挙げ自信がついた。

…まず、言葉の使い方がおかしいだろ。元々の意味は「優秀な将軍に君主が余計な口出しをしなければ戦争に勝つ」という意味合いだが、部下は将軍なのか?リーダーが将軍じゃないのか?

仮にリーダーを君主にして部下を将軍にした場合だが…優秀じゃなかったらどうだったんだ?成功なら良かったけど場合によっては大失敗するぞ?部下の能力はどれくらいだったんだ?中には口出ししないのをいいことに会社の金を懐に入れる奴も出てくるかもしれないぞ?そうしたらどうするんだよ?

切れ者側の部下をみんな平凡な社員ときめつけていないか?優秀な部下なら「ここはこうした方が良くなるかもしれません」と提案してくるかもしれないぞ?

なんか

切れ者リーダーの部下→平凡な奴ら

おっとり型リーダーの部下→元々有能な奴ら

って決めつけてないか?そんなにきれいに分かれるもんじゃないぞ?

兵は拙速なるを聞くも、未だ巧久なるを睹ざるなり(作戦篇1章)

戦争では、失敗だと判断したら素早く切り上げるという話はあるけれども、失敗したとわかっても、その場で立て直そうとして戦いを長引かせて上手く行ったという話は見たことも聞いたことも無いという意味なんだけど、これは勝ち目が無い戦いを続けていてもいたずらに国力を消耗させるだけだからという背景が有っての文なのだが、ビジネス本ではこう説明している。

服飾会社の営業課に縫い方が悪いスーツが届いたと小売店A(個人でやっている)からクレームが来た。別の小売店B(本社が別にある)からも同様のクレームが来た。原因は工場での仕上げが良くなかった。

営業課スタッフの対応

営業マン1→すぐに小売店Aに駆け付け謝罪をした。

営業マン2→まず工場に電話して同じ商品で検品済の問題ないスーツを用意させ、翌日にチェーン店の小売店Bに届くように手配してから菓子折りを持って小売店Bに行き謝罪した。

ビジネス本では営業マン1の方が評価されていた。すぐに駆け付けた姿勢が良いと評価されている。一方、営業マン2は替わりを手配したというけど店への反応を早くしてほしかった。会社に伝言を残したといっても不安だと、低評価。問題への対応は早いほどいいと説明してる。

…おかしくないか?営業マン1は、すぐに謝りに行ったけど、それからの手配だから品物が届くのは遅くなる。営業マン2は品物が直ぐに届くように動いた。実際に店にとって良かったのは営業マン2の対応じゃないのか?それに店には直接駆け付けなかったけど本社に連絡をしている。トラブルがあったら普通は本部に連絡して先方全体が状況を把握できるようにしないか?会社から店に連絡が上手く行かなかったのは店側の問題じゃないのか?

売店Bは元々営業マン2が嫌いだったんじゃないのかとも思えてくる。そういう時はなんだかんだいってケチつけるからね。

対応が早いって直接出向いて謝ることだけなの?

衆を治むること寡を治むるが如くなるは、分数是なり(勢篇1章)

大部隊の兵士を統率するのを小部隊の兵士を統率するようにスムーズにいくのは部隊編成がしっかりとされているからだという意味なんだけど、ビジネス本での説明が酷い。

ある一流企業の課長の机には書類が無い。上からの指示は直ぐに部下に任せて、部下からの報告は直ぐに上層部に報告。

書類は直ぐに現場に流さないと意味が無い。自分の手元の書類を無くすのが自分の仕事というのが課長さんの主張なのだが、それってただの丸投げじゃねえの?問題点をチェックしないの?そういうのが本来の仕事じゃないの?丸投げされたホウは大変だぜ。問題点を抱えながらいきなりやらなくちゃいけないんだから。部下からの報告も〇〇〇判押して上に流すだけ?判を押すというのはチェックする意味だよ。そこで間違いが有ったら課長のチェックミスになるんだよ。上から突き返されたら直すのは部下だよ。これ、課長いらないじゃん。これでスムーズに行くってことは部下が優秀だからとしか言いようがない。課長を廃して部下と上層部でやり合えばいいだけだよ。ただ判子押すだけの課長なんていらないでしょ?

ビジネス本では部下に任せているという事が大事だと説明してるけど、これは任せているっていうよりただの丸投げでしかない。部下が苦しんでるときにろくに仕事の内容に目を通していない奴が直ぐに対応できるのか?

粗悪な孫子ビジネス本で何が学べる?

前回にも書いたけど、自分でかみ砕いて理解して仕事のやり方に応用していくしかないんですよ。

ビジネス本に書いて有るのは文章の解釈を説得させるための成功例しか書かれない。

そうしたら成功例を真似てしまう。成功例はその成功した諸条件が重なっただけ。似たような場合でも諸条件は異なる。条件に合わない戦術は失敗する。だから「兵を形すの極は無形に至る」(虚実篇6章)であり「兵の形は水に象る」(虚実篇7章)なんだよ。

パターンを決めつけたらそれは孫子の兵法じゃないんだ。ただ真似しても失敗するだけだよ。

 

しっかりと訳された古典とその解説書を読んでいこう。

それしか方法は無いよ。

図解はくだらなさ過ぎてツッコミ入れる気にもなれん

孫子の話はこれでお終い。ツイッターに出回ってる粗悪な図解にツッコミを入れようとも思ったけどあまりにも下らなさ過ぎたのでやめた。そんな駄目図解に付き合ってる暇があったら他の事やるよ。普段は本を読まない人を読んだ気にさせて信者増やして小遣い稼ぎでもやっててくださいな。

 

「北渓字義」の続きをやるよ。

 

終わり