哲学ナックルダスター

主に東洋古典を自分の言葉で噛み砕いてくブログ。たまに俳句を詠んだり、他の記事も書きます

貞観政要かみ砕き 61「巻三 択官 第七」第八章

前回の続き

kamata-ei.hatenablog.com

久々に再開。

これは、講談社学術文庫から出ている「貞観政要 全訳注」を自分なりに要約しているものです。現代語訳と原文とをにらめっこしながらやってます。

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「巻三 択官 第七」第八章から

 

第八章 ちかごろ尚書省(しょうしょしょう)がたるんでいる理由

官僚の取り締まりをする役人の劉洎(りゅうき)が尚書省(政令を執行する行政府)の副長官の補佐官(二名。当時、長官職は空席とし、二名の副長官が実質上の長官であった)に就任させる者は特別な精査が必要であると考え、太宗に以下のような手紙を出した。

劉洎「私は、多くの重要な政務を担当する尚書省こそ、国の政治の大本となると聞いています。私めの考えでは尚書省の仕事をするにふさわしい人物を探し求め選考し就任させることは非常に難しい事でございます。尚書省の二人の副長官と六つの下部組織の各長官の合計八人は、文昌星(北斗七星を構成する星の一つ。中国では学問を司る神とされていた)に見立てることができます。副長官の補佐官二名は、管轄星(これは意味を確認できなかった)に見立てることができます。上位から下位の役人に至るまで天空の二十八宿(中国では宇宙を星座を目安にして28のエリアに分けていた)に見立てることができます。もし、その者が役職に相応しい能力が無ければ、多くの人に役職泥棒と非難されるでしょう。私めが見るところ、仕事の処理が遅く、政令の文書の作成と発布が滞っています。私はそれほど頭の良い人間では有りませんが、その原因について述べさせていただきます。

昔は今よりも多忙だったのに今よりもしっかりしていた。

劉洎「貞観の世の初めの頃は尚書省には長官も副長官もいませんでした。当時の尚書省内の仕事はとても多くその多忙さは今の倍はあったでしょう。ですが、当時の副長官の補佐官であった、戴冑と魏徴の二人が、人並外れた優れた役人としての能力を持ち、物事を公平に扱い、重要とあらば役人の罪を遠慮なく弾劾していました。陛下も彼らの仕事に優しく応じて頂いていたので、自然と尚書省内は皆慎んで粛々と仕事を進めておりました。役人たちが皆、仕事をさぼらなかった理由はこれでございます。魏徴の後に就任した杜生倫(とせいりん)も部下たちにしっかりと仕事に励むことを大いに奨励していました。

最近の尚書省がたるんでいる理由

最近の尚書省内がたるんでいるのは、功績のあった者や皇族の外戚が高い役職についていますが、役職を勤め上げるだけの能力が無く、威張り散らしているだけだからです。これによって多くの官僚たちはしっかりと仕事を処理せず、省内を良くしようと考えている者は良くしようと動いても多くの人から非難されるのではと怯えております。省内の下の位の役人たちは上からの命令を受けるだけとなってしまい、トップたちは相応しい能力が無いので素早く決断すべき事項にも対応できなくなってしまいました。ある者は弾劾を先延ばしにし、ある者は既にできている草案を更に見直しをしようとはしません。文書の提出期限が無いので遅い提出でも怒られることは有りません。一度、尚書省に案件を提出すると、ことを進めるのに何年もかかります。政治への希望や情熱を失っています。非難されるのを嫌がり、良い意見が出ない様抑えつけをしている役人もいます。上からの案を文書にすればそれで完成として、その案が本当に政治の為になるのかそれとも害になるのかをチェックをしません。六つの下部組織の各長官は上からの命令が正しいか否かは関係なく、ゴマすりイエスマンになることが仕事だと考えており、その政務が妥当か否かをじっくりと話し合うようなことはしません。彼らはお互いに姑息な手を使って一時しのぎの取り繕いのことばかり考えています。

相応しい才能が無ければ官職に就けてはいけない

劉洎「多くの人の中から人材を選び出し官職に任命する際には、その職務に相応しい才能を持ち合わせない馬鹿者を任命してはいけません。天の代わりに人が世を治めるのです。やたらに人を採用して良いものなのでしょうか。功績のあった者や皇族の外戚に対しては礼と俸禄で応じれば済むだけの話です。年を取りすぎてただの老いぼれになった者や、病気続きで満足に仕事もできず知恵も出せない者は、国政に何の利益ももたらさないので引退をさせるべきです。無能な彼らが役職に居座り続け賢人が昇進する邪魔になっていることは、非常に良くない事です。尚書省をこのような弊害から救い出すには副長官の補佐官とその秘書は良く精査して選び任命することです。相応しい能力のある者をこの役職に就けさせることが出来れば、尚書省内の空気は自然と引き締まり、権力をバックにではなく、実力で正しく競い合って政務に取り組んでいく事でしょう。これこそ尚書省内のたるみっぷりを解消できるとよくよく考えた方法でございます」

太宗の反応

劉洎からの手紙をよく読んだ太宗は、後に劉洎を副長官の補佐官に任命した。

 

続く